ついに懇親会の時間がやってきた。
この頃には知り合いになった学生もいるし,心配はないと思われた。
しかし,会場への移動途中で知り合いの学生とはぐれてしまった。
乾杯後一人でキョロキョロしながら周りを見渡すといつの間にか女性スタッフが隣にいた。
「こんにちは!どこから来たんですか?」
「東京です。」
「じゃあここから近い方ですね。私は北海道なんです。」
彼女は昨年初めて夏期セミナーに参加し,いつの間にかスタッフになっていたという。
なんとなく感じていたことだが,スタッフなのに普通の参加者と同じように夏期セミナーを楽しんでいる雰囲気がある。
夏期セミナー,家庭医療への関心の理由を聞きつつ,僕が普段思うことも話した。
「町のお医者さんに関心があってこのセミナーに参加したんです。」
「いいですねえ!私も大体同じです。どうして町のお医者さんに興味を持ったんですか?」
「多分昔お世話になった町医者が自分の理想像になっているんだと思います。老若男女いろんな患者さんがやってきて,時には世間話もきいて・・・。」
話しながら,こんなことを語るのは医学部の面接受験以来ではないかと思った。
そして,漠然としていた将来像が,話しているうちに少し形作られてきたことに気づいた。
自分の将来を話す場。他の人の将来を聞く場。
新しい空間に,僕の胸は高鳴った。
懇親会は明日もある。先生もせっかくいらっしゃることだし,明日は先生に直接話しを伺ってみよう。