学生・研修医部会の歴史

(2009年度下半期~2010年度上半期年間活動報告書より)

『日本プライマリ・ケア連合学会学生・研修医部会(旧日本家庭医療学会学生研修医部会)』は現在から11年前の1999年10月に発足した。当時は「家庭医療」という言葉も今日ほど世に浸透していない時代であった。しかし、そのような時代の中から、家庭医療に関心を持ち、家庭医療を学びたいと強く願う学生たちによって部会はその歩みを始めた。部会発足の礎にあるのは「家庭医療について正しい知識を得て、気軽に情報交換ができ、家庭医療学の将来を考える場所を作ろう」という想いである。そして部会は『医学部の卒前・卒後教育ではほとんど取り上げられていない家庭医療学を自主的に学ぶ場』として,また『各人の将来の医師像を考える場』として、これまで活躍してきた。日本プライマリ・ケア連合学会学生・研修医部会は、親学会の正式な下部組織として、現在、旧日本家庭医療学会会員の学生と初期研修医(研修2年目まで)によって構成されている。しかし部会が企画する活動への参加に制限はなく、だれでも活動に自由に参加することができる。また、その活動内容は主に次にまとめられる。

  1. 学生・研修医のための夏期セミナーの開催
  2. メーリングリストの運営
  3. ワークショップ、勉強会の開催
  4. 実習施設についての情報交換及び紹介
  5. 年 1 回以上の活動報告会の開催
  6. 活動報告書を年 1 回作成
  7. その他、目的に沿った活動

これらの中でも特に部会活動の中心を担うものが『医学生・研修医のための家庭医療学夏期セミナー』の企画・運営である。夏期セミナーは今年で22回目となるが、セミナー開始当初は、学生・研修医に家庭医療学に関心を持ってもらうことを目的として家庭医療学研究会(旧日本家庭医療学会の前身)が主催したものであった。夏期セミナーの第1回は『若い人に家庭医療を知ってほしい』という想いから、当時の家庭医療研究会のコアメンバー(旧家庭医療学会理事に相当)がセミナーを作るという形で企画したもので、12回までは旧家庭医療学会各理事が企画運営していた。しかし、研修医部会の発足を契機に13回目からはその企画を学生へ委譲する形となり、セミナー運営は会を重ねていく中、学生・研修医部会を中心としたものへと変遷していった。また、部会はセミナーの企画・運営にあたり、担当の理事の先生のサポートにより、学会の執行部との連携を図っていただき、そして学会からのサポートを受けることで、夏期セミナーを親学会の企画として運営できている。学生・研修医部会の第1期代表の中村明澄先生(現筑波大学附属病院総合診療科)のお話に13回目からはその企画を学生へ委譲する形となり、セミナー運営は会を重ねていく中、学生・研修医部会を中心としたものへと変遷していった。また、部会はセミナーの企画・運営にあたり、担当の理事の先生のサポートにより、学会の執行部との連携を図っていただき、そして学会からのサポートを受けることで、夏期セミナーを親学会の企画として運営できている。夏期セミナーの変わらぬ伝統は「学生と研修医、そして家庭医陵を実践されている医師の先生方とが交流し、それぞれの医療に対する熱い想いをぶつけ合い、共有し合い、そして明日の医療に希望を抱く場所」であるということ。そして翌年のセミナースタッフは、毎年夏期セミナーの現場で立候補によって決まるというのも夏期セミナーが明日への医療に想いを巡らす、そんな熱い仲間の集まりである所以であろう。今回私が部会の歴史を調べるにあたり、第1期学生・研修医部会代表の中村明澄先生、前学生・研修医部会担当理事であられた筑波大学附属病院総合診療科の前野哲博先生、そして現担当理事であられる筑波大学附属病院水戸地域医療センターの小林裕幸先生など多くの方のご協力をいただくことができた。先生方にはこの場を借りまして深謝申し上げます。そして部会と学会の歴史に触れていく中で、現在の自分たちの活動の意義を知ることができた。今年の3学会の合併により、より多くの医療人が家庭医療を知り、またチーム医療を学ぶ機会が持てるようになり、私たちの活動の意義もさらに大きなものになっていくであろう。学生・研修医部会の活動から、そしてこの夏期セミナーから、一人でも多くの医療人が、明日の医療に想いを描き活躍していけることを願う。そして学生たちが自主的に学び、考え、行動できる舞台として学生・研修医部会が今後も新たな歴史を作っていけることを期待している。

文責:三武普